研究プロジェクト2022

ミネラルは元気な精子に必要か_2022?

伊藤潤哉(分子生殖科学)、寺川 純平(ゲノム編集・疾患モデル)、野口
倫子(臨床繁殖学)、大我 政敏(生殖受精エピゲノム)

研究の背景

これまでに精子凍結や体外受精、人工授精といった生殖技術が開発され、希少動物の保護や家畜の効率的生産等に応用されています。さらにその技術は、我々ヒトの生殖医療(不妊治療)にも応用されています。実際に2018年のデータでは日本の新生児の約16人に1人が体外受精由来で生まれており生殖技術は少子化の抑制にも貢献しています。

またマウスでは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)から精子・卵が作製可能となりました。今後ヒトに応用されることで究極の不妊症治療法になる可能性があります。しかし、それらを受精させ得られた受精卵(胚)の個体への発生能は現在は低く、その解決には体内でどのように生殖細胞が形成され、機能するのかを分子レベルで解明する必要があります。

本プロジェクトでは実験動物マウスをモデルとして用い、分子生物学的アプローチから哺乳類の雄性生殖細胞精子の形成・機能を分子レベルで解明する研究に携わっていただきます。

アプローチ

本プロジェクトでは、マウスの精子形成・機能に関わる「亜鉛シグナル」に焦点を当て、その役割を明らかにします。

生殖分野において亜鉛シグナルは、精子形成、性欲増進、妊娠の維持等多くの重要な機能に関わっていると言われており、それらの効果を謳った亜鉛サプリメントも販売されています。しかし、亜鉛が生殖細胞にとって「どの時期」に「どのように」大事なのかは不明です。私達のグループでは、亜鉛イオンを細胞内外に輸送する「亜鉛輸送体」に着目し、亜鉛輸送体の生殖細胞での機能を調べています。実際に亜鉛輸送体を体内で作れなくしたマウスを調べてみると、雌では受精や妊娠に異常が起こることがわかりました。本プロジェクトでは雄性生殖細胞(精子)や支持細胞に焦点を当てて研究を進めます。

実際にはマウス生殖技術の習得(大我)、組織学解析(寺川)、内分泌動態(野口)分子生物学的解析(伊藤)によりプロジェクトをサポートします。定期的な研究進捗状況発表会を開催し、プレゼンテーション能力、教員とのディスカッションを通じて論理的な思考力も養ってもらいます。

期待される結果

本プロジェクトにより哺乳類の雄生殖細胞に関する亜鉛シグナルの重要性が明らかにできれば、得られた知見を、希少動物や実験動物、家畜の生殖工学技術に応用することにより、『個体への高い発生能をもつ哺乳類卵・胚の体外生産法』を開発できると考えられます。また現在の技術では治療不可能なヒト不妊症の新たな治療法の開発にも応用できる可能性も秘めています。

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