新田梢(植物生態学)、片平浩孝(環境生物)、髙田久美子(気候システム学)
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研究の背景
近年の重要な環境課題の一つに、「生物多様性」の喪失があります。私たちは自然から、衣食住といった生活の基盤だけでなく、文化的な豊かさなど様々な恩恵を受けて日々暮らしています。
地域の緑地は、希少な動植物の逃避地となり、自然を身近に感じられる憩いの場所として人々に利用されてきました。一方、その重要性が満足に把握されないまま開発が進んだり、適切な管理がされずに放置されたりして、出現種数の減少や外来種侵入など、さまざまな問題がおこっています。
アプローチ
主に、大学近郊(神奈川県や東京都)に残る緑地で、いつ・どこに・何が生えているかを記録する、植物調査を行います。フィールドワークとデータ解析から、植物相の把握や多様性評価を実施し、緑地管理へのフィードバックを目指します。
時期や興味に応じて、植物以外の生物調査や遺伝子解析なども行う場合があります。地形や気候との関係など、地域の自然環境の価値について総合的に検討します。
期待される結果
- 地域の緑地の豊かな植物相の再発見
意外なことに、地域の植物については未だに把握されていない部分もあります。また、植物相も年々変化していくため、記録することが重要になってきます。このプロジェクトを通じて、生物多様性という、身近な「生態系サービス」の基盤を明らかにします。 - 地域の自然環境の価値を総合的に評価
短期的視野だけでなく、地球規模での長期的な視点からも、地域の緑地との付き合いを理解することができます。
現状とこれから
学生のみなさんは、野外でのフィールドワークを通して、基礎的な調査技術、植物を中心とした野生生物・自然環境の基礎知識などを習得していきます。
2021年度のプロジェクトでは、市民の努力によって保全されている相模原市古淵の緑地で植物調査を行いました。冬から春にかけて劇的に変化する林床の植物相を記録しました。引き継ぎ、調査を続け、光や管理との関係を明らかにしていきます。可能であれば、より広範かつさまざまな緑地の環境を明らかにしていきます。