One Welfareパイロット・スタディー飼育下海生哺乳類の動物福祉ー

植竹勝治(応用動物管理学)、加瀬ちひろ(応用動物行動学)、小玉敏也(環境教育学)、福井智紀(理科教育学)

研究の背景

  • 昨年度の研究プロジェクト「One Welfareパイロット・スタディ」では、動物園動物(陸生哺乳類)を対象に、動物福祉の行動学的指標である常同行動について実態調査(複数の園を対象に、発生頻度、発生に影響する因子を研究)を開始した。
  • 海生哺乳類には、クジラ類(クジラ・イルカ)、海牛(ジュゴン・マナティー)、鰭脚類(アシカ・アザラシなど)、ラッコが含まれ、イルカやアザラシ科の動物にも常同行動の発生がみられると報告されているが、その実態については不明な点が多い。
  • そこで、本プロジェクトでは、水族館で飼育される海生哺乳類の常同行動について実態調査を実施する。

アプローチ

  • 動物園水族館協会に加盟する関東の水族館(20館)を対象にして調査を開始する。
  • はじめに、各水族館で飼育されている海生哺乳類をホームページの館内マップ等で確認した上で、観察時間帯が均等になるように反復して行動観察し、常同行動を発現する動物種を確認する。
  • つづいて、常同行動が観察された動物種・個体を対象に、常同運動症の重症度(SSS)を評価するとともに、発生影響因子について考察するために水族館・飼育員への聞き取り調査等を実施する。

期待される結果

  • イギリスでの動物園来園者を対象にした調査では、動物福祉や環境エンリッチメントが動物園の優先事項となり、それが実践される証拠を見たいと期待されている。
  • 日本においても、近年、動物福祉や常同行動について知られるようになると、動物園や水族館のあり方について疑問が投げかけられるようになってきている。
  • 本研究プロジェクトから得られる科学的データに基づき、水族館における海生哺乳類の飼育のあり方について、健全な議論が展開されることが期待される。

現状とこれから

  • 昨年度の研究プロジェクト「One Welfareパイロット・スタディ」では、先行して動物園動物(陸生哺乳類)を対象にした調査を開始している。
  • その研究グループとも情報および意見交換をしながら研究を進めていく。
  • 両者の結果を合わせて、日本における動物園水族館のあり方について考えるとともに、陸生・海生哺乳類における常同行動の発生機序や対処方法について検討していく。
  • 本プロジェクトへの参加経験が、科学的リテラシー向上と将来の進路について考える、ひとつのきっかけ(機会)になればと思います。

求める学生像

動物福祉はもとより、人と動物との共生関係および野生動物や自然環境の保全にも関心があり、チームで協調して活動ができる学生

研究詳細PDF
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