研究プロジェクト2021

ペットと過ごすと人は健康になるか?-大規模な前向き研究データを用いた解析

石原淳子(疫学・公衆衛生学)、小手森綾香(食の情報・栄養疫学)、中舘美佐子(公衆栄養学)、久世明香(行動発達)、永澤美保(同調的共生)、菊水健史(社会内分泌)、茂木一孝(社会神経学)

研究の背景

動物との共生が人間の健康にもたらす影響について、近年、人を対象とした欧米の前向き研究からのエビデンスが多くみられるようになりました。アレルギー、喘息や肥満のみならず、がんや精神疾患との関連性についても明らかになりつつあります。

前向きコホート研究(*)は、疫学観察研究の中で最も質が高い研究デザインですが、ある要因が原因となって疾病が発生するまでの間、一定期間観察が必要であることから、日本では動物との共生を的確に把握した前向き研究が十分でないのが現状です。一方、欧米人とは異なる遺伝的背景や生活習慣を持つ日本人では、動物共生による健康影響も異なる可能性もあり、日本人集団を対象としたエビデンスを創出することが重要です。

そこで、私たちは動物との共生が日本人の健康に与える影響を明らかにするために前向きコホート研究の既存データを用いた研究を実施します。人を対象とした研究には欠かせない疫学の考え方と、データ解析・収集のスキルが身につきます。

(*)前向きコホート研究とは、あらかじめ原因を調べておいて、その後の健康状態を追跡する疫学研究の方法です。原因と結果の発生順序に沿っていることから、人を対象とした研究で生じやすい様々なバイアスを回避することができます。

アプローチ

本研究では以下の2つの大規模コホート集団の解析を主軸に、データの収集も行っていきます。
思春期の子どもを対象とした東京ティーンコホート研究
中高年を対象とした次世代多目的コホート研究

  1. コホート集団で動物共生の曝露頻度と生活習慣等との関連(横断解析)
    疫学研究の第一歩は数を数えることにあります。種類別ペット飼育状況についてアンケートの回答から得られた情報を解析して、運動習慣やQOLなどとの関連を横断的に調べます。
  2. 曝露の詳細情報収集(データ収集)
    「ペットと暮らしている」と回答した方に対して、期間や場所、かかわりや愛着の程度などの追加情報の収集を行います。質問票の妥当性検討を行い、生体試料の収集なども行います。アンケートを設計し、回答率を上げるための工夫を凝らした実施計画を立てます
  3. 追跡後の健康アウトカムとの関連(前向き解析)
    追跡後に得られる様々な健康アウトカム(アレルギー疾患、がん、循環器疾患、認知症等)との関連を解析します。

期待される結果

  • 動物との共生の現状と、関連する生活習慣などの要因解明
    ⇒ ペットと人の暮らしの現状が明らかになり、動物共生研究の発展に貢献!
  • 動物共生による健康影響を人間集団を対象に解明
    ⇒ 動物共生と疾病予防の因果関係解明につながる研究成果!
    ⇒ 公衆衛生の実践活動の根拠となるエビデンス創出に貢献!

現状とこれから

東京ティーンコホート研究のデータ解析では、アレルギー疾患との関連解析に着手しており、今後、他の生活習慣などとの関連を考慮して解析を進めて行く予定です。中高年のコホート研究については、今年度からスタートする約10万人を対象としたアンケートのデータを用いて、解析と追加データ収集を進めて行く予定です。

募集について

募集人数:2名程度
求める学生像: 疫学研究は被検者の方から貴重な情報や試料をお預かりして、データ化・分析し、 個人情報を守りながら、研究結果を社会に還元する使命があります。時間やルールを守れる方、責任感のある方に仲間になってほしいと思っています。 また、データ解析・プログラミングなどデータサイエンスのスキルを身につけたい方、 将来、人の健康に貢献する仕事につきたいと思っている方も歓迎します。

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